設計:角舘政英+藤原京子
協賛:松下電工株式会社、ファーストデザインシステム株式会社
「谷中332」と題されたインスタレーションが、「納豆漁業121メートル集合」企画・主催で東京・千駄木にある戦後直後に建てられた中廊下型の木造のアパートが取り壊される前に行われた。参加したアーティストは30名ほどで、各部屋、廊下を展示、音楽、パフォーマンスと多岐にわたった内容であった。我々はこの廊下を舞台にインスタレーションをおこなった。
廊下の壁面に20Wの蛍光灯を取り付けこれらがランダムに調光されながら点滅(明-暗)するようにした。我々はこの場において「歩行する」という単純な人の行動にとって物が見えること、空間を認知すること、すなわち、「光がある」ということがいかに人の行為に影響するかを体験してもらいたかった。
私たちは公共の空間(道路、駅など)で周りが見えないほどの暗さに出会うことはない。歩行にさいし最低限の明るさは親切にも提供されている。
ゆえに「明」から「闇」に明るさのレベルが移行したとき、その場にいる人は歩くことが困難になり、立ち止まり、ストレスを感じることになる。
視覚から別の感覚(聴覚、触覚など)に空間把握の感覚が以降するのに気が付き、「明」から「闇」に連続的に以降する状態を体験することによってのみ「明るさ」「暗さ」に対する感覚を唯一把握することができるのではないだろうか。
ここでは連続的に変化する「明」「暗」の中を歩く行動を通して明るさのレベルを感覚的に認識することができる場であった。
また、この場をかりて、照明器具を寄付していただいた松下電工様、調光器を貸していただいたファーストデザインシステム様には深く御礼を申し上げます。