「人のアクティビテーを可視化する」
The person's activity is made visible by light.


 その場所で人がどんな行為をするかを考えていくと本当に必要な光が見えてくる。 例えば、平らな道を歩くならば路面が明るくなくても、今何処にいて何処に行くべきかというサイン的な光があれば不満を感じることなく歩けてしまう。集合住宅の共有部はパブリック(公共)とプライベート(私的)な部分を持ち合わせた空間であると言える。パブリックな場所では防犯性を考慮した対人に対する考慮が必要とされている。しかし近年の集合住宅は敷地内に住人しか入れないようなセキュリティーシステムがあるため、共有部はある意味プライベートな空間としての人のアクティビティーに合わせた光環境が必要となる。
 それは人が寝静まった深夜などの時間帯は防犯性の高い光環境が必要であり、逆に人がまだ起きている時間帯では空間として防犯性を低くしても成立する。この考え方は機能性に合わせた省エネの新たな考え方ともなる。
 人の生活する場には光があり、光があるところには人の生活がある。そんな基本的な人の行為を基準にした当たり前の光環境を今の時代、再構築する必要がある。デザインを追及するということから「人」との関わりを機能的に解答を導き出す手法に新たな建築の可能性がある。


介護老人保健施設 マイウェイ四谷
設計:佐々木龍朗/佐々木設計事務所 所在地:東京
都市型の新しいタイプの老健でありロの字型に配置された100床室を有する。下階まで複雑に入り込んだ吹き抜けとディルームを結ぶ光と老人にとってのサイン的な照明を目指した。


東京ハウス/岡崎邸
設計:阿部仁史/阿部仁史アトリエ 所在地:東京
都心に建つ9坪の狭い敷地に対する解答として斜めに切りかかれたトップライトから光が射し込み、ペントハウス部と2F床のアルミ板の反射によって建物全体に光を落とす。照明器具はシンプルなディテールを採用した。


F邸
設計:手塚貴晴+手塚由比/手塚建築研究所 所在地:岡山 写真:木田勝久
山の中腹に約40m×8mの大屋根の住宅が建てられた。両側のサッシは開放されランドスケープと一体化する。照明は裸電球をミニマムに配置した。


越後松之山「森の学校」キョロロ
設計:手塚貴晴+手塚由比/手塚建築研究所 所在地:新潟
展示空間は一般的な美術館照明のセオリーを満足し、建築空間の演出的光として拡散型ペンダントを連続的に配置した。結果、この拡散する光が美術品を鑑賞する上で今までにない有効な照明であった事が判明した。


青葉亭
設計:阿部仁史/阿部仁史アトリエ 所在地:宮城
室内全体を穴のパターンによって森をイメージした鉄板が取り囲むようにデザインされている。木漏れ日ライトと名付けた鉄板の裏には単純な電球が取り付けられている。


フェリシモ生活提案店
設計:迫慶一郎/SAKO建築設計工社 所在地:中国北京
約400㎡に天井よりぶら下がっている約150本の白色ネオンによって約500ルクスの照度を確保している。中国の事情からネオンの単価が安い事によって実現できた。


大阪ヒルトンプラザウェスト
設計:竹中工務店 所在地:大阪
大阪駅前に建設される新たなランドマークに対して、夜間、施設内部の人のアクティビテーが素直に染み出て、共有廊下部も店舗が目立つような計画を行った。ファサードは人がいなくなった事務室のマリオンがライトアップされる。


コムサイズム
設計:玉置順/玉置アトリエ 所在地:栃木
売場面積約1500㎡にトラック状の領域を特別に塗装されたガラス壁が覆っている。トラックの外周には蛍光灯の配列によって空間を表現し、試着室内は白熱光と蛍光灯光の二つのモードを用意した。


富山県八尾町and五箇山相倉集落 「夢あかり」プロジェクト
所在地:冨山
現在のインフラの照明計画は路面照度の基準に従っている例が多い中、八尾町では新たな光環境を構築する計画が進めれれている。八尾町での人が歩道を歩くという性能を得るための光環境や人気を作ることによって街路の防犯性を高める試み、歩行者が散策できる光環境の整備等、様々な角度から光の実験を行っている。また世界遺産の合掌造りの相倉集落でも同じような試みが進行中である。
共同研究者/東京都市大学建築学科小林研究室

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